折々の記 13

なごり雪 空から

 

3月に入ってよく雨が降る。

一雨ごとに春が近づいていることにささやかな喜びを感じていた今日、朝から寒さがぶり返したような気配があった。

確かに空はどんよりと曇り、「ひと雨来るのかな?」と思っていると、小さな白い粒が手のひらに舞い降りてきた。

小さな小さな粉雪だ。

吹雪くのではなく、ちらほらと頼りなげに舞い降りてくる。

あと一週間ほどでお彼岸である。

こんな時期に雪とは・・・

そういえば、・・・ふと思い返してみると今年の冬は暖冬だったせいか、ほとんど雪を見ていない。

私の住む大阪の北河内は、もともと雪には縁の薄い土地だ。

吹雪くことはあっても積もるということは滅多にない。

ましてや暖冬となると、今年は降ったのを数回見た程度であった。

それがここにきて彼岸の入りを前になごり雪である。

往く冬の名残を惜しむかのように少し遠慮がちに空を舞う粉雪に、今年の冬が終わりを告げていることに思いを馳せた。

風はいよいよ冷たい。

それでも時折り雲間から覗く太陽は間違いなく春のそれだ。

ただでさえ印象の薄い今年の冬を「どうか忘れないで。」と、懇願しているのかも知れない。

なごり雪は地面に落ちて風と共に流され、瞬く間に視界から消え去ってしまう。

儚い命であるだけに何故か心に残る。

昨秋に訪れた日和田はまだ雪の中であろう。

私の住む大阪はもうすぐ春が来ます。

春はきっと駆け足でやって来るはず。

日和田の山々に新しい命が芽吹くのもそう遠くはないでしょう。

身を切るような冷たい風にも、どことなく暖かさを感じることのできる今日です。